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隼田院ハザマ日記 4:00~5:00

  • seamaaaaan
  • 2021年9月4日
  • 読了時間: 3分


 真柄信繁。イバラシティでの名前は真柄信。

 海辺におちている鉄塊の側で出会った彼との初対面はそれはまあ酷いものだった。

 私の姿はこうだから、いかにも人間といった風の彼には、彼なりに当然の成り行きで討伐されかけた。

 ゲーム的にいえば、毛皮や肉をはがされ素材にされてしまうところだった。

 もちろん私も人間なので私にとっては全然当然じゃないけれど。




 ひとつ、イカボッド(仮)であった友人(現御曹院シオン)とツーマンセルでいられたこと。

 ふたつ、真柄信繁に対し、『これは弱い者いじめだ』と無抵抗に主張した場合、真柄信繁が『止まってくれるような性格の持ち主』だったこと。


 これら二つがなければまあ、私はまたまたあの場面で死んでいたのかもしれない。

 残機を失いやすい人生で辟易するね。


 私の攻撃性のなさを信用して頂いたあとは、真柄信繁とは幾度も会話をもってきた。

 出会いから一年には満たないと思う。

 昼夜のある世界から来た私は、明るい・暗いの見分け方で日付はなるべく数えるよう心掛けていたが、アンジニティでは一日が24時間かどうかさえ誰にも教えて頂けず、教えて頂けたとしてそれが真実とも限らなかった。


 曰く、彼はアズマという世界の武士。イバラシテイでいうところの異能にあたる能力はいくつかの素材を操るもので、数百もの人間を爆ぜ殺しアンジニティへと放逐されたとのことだ。


 話を聞いて私は、溶融ガラスを冷水に落としたものを思い浮かべた。

 イバラシティではルパートの滴などで調べるといい。

 強化ガラスほどの耐久力を持つ一方、涙型の細い部分を折ると爆発する。


 または黒色火薬には硝石を使うことを思った。

 硝子という字の通り。




 彼は「恨みを買いすぎた」と言った。

 私は「そうかしら」と思った。



 恐れられたのだろうと私は思った。

 恨みだけならこんな場所にはこないだろうと。


 当人にとってそんな事情も想像でしかないのなら

 彼には和解のための機会さえ与えられなかったのだろうか?




 牛鬼丸と名付けられたとのことだから。

 人はあの子が恐ろしかったのではなかろうか。

 16歳。まだまだ子供だっていうのにね。




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* * *



 海辺におちていた鉄塊は見るからに機械であるようだった。

 私の元いた世界ではまだまだSFの世界。それに類する見た目をしていた。

 私はもちろんそれを気にかけていた。

 世界間通信が欲しかったからだ。


 ところで、なぜ世界間通信が欲しかったかだけれど。

 私はどこかの誰かと話をしたかった。

 あとはアンジニティで何かが分からなかった時、私には知識を得るのが難しいからだ。

 他所の世界でならわかることもあるだろう。


 真柄と和解後は彼の拠点になっていた鉄の塊に触れることを許して貰えた。

 しかし鉄の塊はうんともすんともいわなかった。

 イカボッドをおだてて試させてみたが、なんの反応もなかった。

 壊れているのだとして、修理の方策もこの私には思い当たらなかった。



* * *



 先程深山陽葉里からメッセージが届いた。



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 ああなるほど。


 真柄もあの性格だ。己がアンジニティから来たことを最初に伝えたのだろう。

 深山陽葉里はそれを聞いて、私を気遣い、話してくれた。



 私達の存在は嘘なのか?


 真柄信繁とタピオカ。

 真柄信と隼田院フリージア。


 真柄は、この状態を深山陽葉里に対してどう表現したのだろう?


 私はアンジニティの真柄信繁を知っている。

 私達は私達の人間性に嘘をついていない。

 私達はアンジニティにいてもイバラシティにいても、そのまま。




 ねえ、ヒバリちゃん。

 優しいきみのことが私は心配だ。



 だって真柄信繁と真柄信がが同じだということは

 イバラシティの私が、ハザマの私と同一であることと同じ。




 きっときみは後悔する。



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