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隼田院ハザマ日記 3:00~4:00

  • seamaaaaan
  • 2021年9月4日
  • 読了時間: 2分

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 あの竜は普段、海のうえを飛んでいた。

 鳥をたべるわけでも、魚をとるわけでもないようだった。

 いつも見えるわけではなくて、それが姿を消しているのか単に遠くにいるのか

 はたまた知らぬうちに海へ入ったのかも、私にはわからなかった。


 私はどうせ街には入れてもらえないし、

 時折岸から見えるそれと会うために海の近くに居座ることが増えた。



 竜はあそこで気というものを食べていたらしい。

 曰く、我々もその気というものを知らず知らずに蓄えていて

 我々や動物たちで満ちた場所では、空を泳ぐだけで口に入る量は、

 随分少ないとのことだった。

 ただ、私達から気を食べることもまた出来て、すると病気を患うことがあるのだそうだ。


 私に気を吸ったという自覚を得た経験はないので、まあ、聞いた話にすぎないけれど。



 蜃は時折あくびやあそびで気を吐いて楼を描いていた。


 その竜は元いた場所で死にかけた者を分け隔てなく楼閣に招き、

 幻のなかで欲を暴き、望みをなんなりと叶えたという。


 たとえば『生きていたい』と望む者の『生きている』を叶える時。

 死にゆく体のこと全て忘れさせ、夢のなかで『生きている』という状態を再現することを

 かの竜は『願いを叶えた』と考える。


 その末に誰かの体が当人さえ気づくことなく死を迎えたとして、

 願いを叶えていないことにはあの竜のなかではなっていないようだった。

 現実で叶えるか幻で叶えるかに、区別を持たないのだろう。


 その辺りが否定された由来だったのだろうか。

 詳しく聞こうにも、竜自身が状況を把握できていないようだった。




* * *




 真柄というサムライと会ったのも海の近くだった。


 まるで海が大好きな人みたいだが、別にそういうわけでもない。

 私は引き籠り生活で足を悪くしていて、自分の体重を支えるのは難しく

 大きな移動を頑張るなんて、一大決心が必要だった。

 体を動かすだけであちこち痛むし、這うしかないから膝が真っ先にダメになるし……

 ハザマでの移動も正直こたえているのだが……まあそれはいい。


 諦めきれなさが全くないわけでもないから、少しづつ居場所を変えたり

 何かに襲われたら逃げまどったりする過程で移動をし続けて

 海岸に大きな鉄の塊をみつけた。


 私は例によって世界間通信を探そうとした。

 その鉄の塊を拠点としていたのが、真柄信繁だった。




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