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隼田院ハザマ日記 25:00~26:00

  • seamaaaaan
  • 2021年12月5日
  • 読了時間: 5分



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* * *



 私と親しくなったあの子たちのうち、最初のひとりと会うことになった日、


 私はどきどきして眠れず、

 不安でくるしくて、

 それでも私が『これ』を誰かから得ることが、

 このまま、ずっと、一生出来ないのは、不平等だと思った。


 出会ってはじめて残念ながら絶叫された。

 理不尽だと思った。



 『顔とかおれだって自信ないよ、大丈夫だよ!』


 『絶対にキライにならないって、約束する!』


 『なにがあってもタピオカのためのおれでいる』


 『親友だし。

  おれはずっとタピオカのもの。』



 あの子は私にそう話してくれた。

 だから私は私の居場所へ招き入れたのだ。不公平だと感じた。




* * *




 私に対して、悲鳴をあげてしまったあの子も、結局私と共にいてくれる事になった。


 ちゃんと謝ってくれているし

 今現在も好きでいてくれていると言ってくれていて

 大事にしてくれるとも約束してくれるが

 あの子は外に出ることはなくなった。


 私はあの子が大切だったから、私があの子の世話をすることになった。


 最初は少し大変だったが、大好きなあの子のためにあくせく頑張ることは、それなりに快感だったので、私は努力を惜しまなかった。


 私はその時再確認した。やはり、分かってもらう事が大事だ。




* * *




 一人目の大好きなあの子は、眠ることと黙々とゲームをすることにすっかり夢中になってしまった。

 それゆえ、私は他の誰かと親しくなっていった。


 仕方がないことだ。

 他に打ち込むものがある人の邪魔でいるほど私は狭量でいたくなかったし、その人がストレスだと嘆く事をやらせるなんて、私だって決して面白くはないのだから。

 二人の人生において時間はこれからもたっぷりあるのだとして、じゃあ、今はそれで構わない事にした。

 未来、あの子の考えが変わることだってあるだろう。


 だから私は私を増やした。

 私はタピオカをあの子にあげて、私の新たなアバターを纏い、別の名前で、また新しい子と親しくなった。


 その子は少し斜に構えたところがあって、変わったものが好きな自分が好きで、変人呼ばわりされる事を生きがいにしているような、そう、彼女の望むように呼ぶなら『変わり者の女の子』である。


 真実がどうあれ、私が彼女をそう呼ぶことに問題はなかった。


 私と話すにつれ、その子は私の事が気になりだして、

 私の違和感や隠し事に惹かれてくれた。

 そしていずれは、最初の子のように約束をしてくれたため、私はまた招いた。


 その子は悲鳴はあげず、こわばった顔で暫くその場でじっとしていたあと、


 『とってもかわいい』


 と言ってくれた。


 そう言ってくれると思っていた。

 彼女の自尊心は、彼女を守るためにひたむきに、私を傷つける方法を選ばないだろうと信じていた。


 すてきだと思った。相性ぴったりとはこのことではないだろうか?




* * *




 暫くその子に外に出る用事を頼んでいたが、じきに頼まれてくれないようになった。


 希望を叶えてよりよくしたと私は考えていたし、あの子も『これでいいの』と言ってくれているのだが、それでも外に出るのはイヤだという。


 そうして、次第私が最初に招いた子と親しくなり、二人で遊ぶようになったので、私はまた私を増やした。




* * *




 私の大好きなあの子たちに子供が生まれた。

 妊娠しているかどうかが私にはわからなかった。それだけ私は物事をしらなかった。

 その出来事は突然だった。

 私は最初に、育てるかどうかをたずねた。

 私は母に何故育てたのかを聞き、その返答を不快に思った経緯があるから、彼らにとってもしもどうでもよいのなら、生かしておくなんて事をしてもいいのかわからなかった。

 彼らはすこし慌てた様子で、育てたい、殺すことはできないと言った。

 なるほど、そういうものかと思った。

 彼らの気持ちは尊重したかったし、私には想像しきれぬ出来事だったから。


 ならばと、私達はそれをささやかにお祝いした。二人は子供まで出来たけれど、それでも外へは出たくないと頑なだったので、私はますます頑張って働こうと思った。彼らの睦まじさが好きだった。


 仕事をするうち、私の作ったアバターを買ってくれた一人と親しくなって、その子の話をきくうち、また私は、その人を貰うことにした。


 私はその子のことも私の元へ迎えた。

 責任感がつよいあの子に、私は少しばかり母の面影をみて、悩み、苦しみ、悲しみを互い熱心にうちあけあった甲斐あって、彼は私を見て床に倒れ込んですこし逃げたあと、『何をすればいいか』を聞いてくれた。息が、ひゅうひゅういっていたことを、よく思い出す。


 私は私の家から出られない事を話していて、彼も事情はよく呑み込んでくれたようだから、その後の話は早かった。彼はおそらく一番長く手伝いをしてくれた。




* * *




 彼と日々語らううちに、彼は残念ながら人生がイヤになってしまったようだった。

 私は熱心に支えたつもりだが、彼は毎日自殺を試みていて、私はそれを仕方なく感じた。

 私も死にたいと思うことは多かった。

 無理からぬことだと思っていた。

 イヤになったのなら休んでと話して、彼は暫く休養に入ることになった。

 最初の子のように、熱心に眠るようになった。


 私は彼の世話もすることになったが、流石に少し荷が重くなってきた。




* * *



 そう、だから、私も少し疲れていた。

 そういったサイクルをそのまま続けることになったけれど、やはり人間疲労していると、丁寧に何事も行うのは難しい。

 けれど、私と、さらに皆を支えるため、やはり誰かに手伝ってもらえると、随分違う。


 そこで私は、いつも思った。


 外に、私が出ればいいんじゃないか?フツーに。

 何度も。何度も、そう思った。



 ……そうだ、だからヒバリとのChatで私はひどく落胆したのだ。

 どうして彼女は、いきなり姿をみせちゃいけない取り決めに、私が私を縛り付けて当たり前だと思ったのだろうか?そんな風に聞こえて、それがとても悲しかった。

 それでは、私は人間扱いされていないと感じたからだ。



 ともかくだ。そういった生活を続けた先、私は失敗をした。


 私達はある子と親しくなったが、もしかすると本当に親しいわけではなかったのかもしれない。

 いや、親しかったとして、彼女はあまり機転のきくほうじゃなかったかもしれない。

 びっくりして、私のことを慮らなかっただけかもしれない。


 私はかわいいあの子のことを悪くいう気もないが、それでもあの子は既に私と約束をしていたから、理不尽だとその時も思った。




* * *




 その子は私から逃げ出した。

 そして私の存在は外へと伝わり、私の存在は明るみに出た。


 私は捕らえられる事になった。

 私と暮らしていた子たちと一緒に。


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