隼田院ハザマ日記 22:00~23:00
- seamaaaaan
- 2021年12月5日
- 読了時間: 2分
私はアンジニテイで、蜃と友人になった。
蜃気楼、の、蜃だ。
気をはいて楼閣をみせるという、自然現象をひきおこすとされている竜。
或いはハマグリ。
あの子は自ら『へんしんちゃん』と名乗った。
人間に貰った最初の名前とのことだった。
時には人間の姿まで纏い、男女どちらの姿にも化けた。
その蜃は、長い年月人間というものに興味をもたずにいたが
小さな切っ掛けで人をいたく気に入ったらしく、私が人間の話をすると喜んでくれた。
なに、ここでいう人間の話というのは、
人間というものそのものの正解不正解に関わらない、いろんな話だ。
ほんとうに、べつに、なんだっていいようだった。
私がどう考え、どう思うっても、あれから返るのは「なぜ」という疑問ばかりだった。
俗にいう綺麗な話汚い話に関わらず話した。
理想像というものを別段もたないようだったから、内容については気にしなかった。
私は生身で人とやり取りをした経験は多くなかったから、
インターネット上で触れ合った人々から得たことをあの子に聞かせることになった。
私とあの子と果たして仲良くなれたかなどわかりはしないが、便宜上友人になった。
人間世界で流通している間柄という仕組みだといえば、あれは受け入れた。
勿論私はあの子と仲良くいたい気持ちでいる。ただ相手の考えがわからないだけで。
それは長い時間を生きるせいか、はたまた強い力をもつせいか、
よくいえばおおらかだった。
眼球に蠅が止まったところでなにもおもわないような。
人のおこした些末な行いに興味があるくせ、
たとえばウサギが鼻をヒクヒクさせているのと
然程の違いを考えていないような感じがした。
私は勘を頼った。
おそらくは攻撃性さえみせなければ、野生の動物として
恐ろしいリアクションが返ってくる事はないと思った。
まあ、死んでもいいかという博打に出てもいいやと思えるくらい、
私はアンジニティの生活に悲観していた。
私はへんしんちゃんにある事を教えることにした。或いはお願い事をしたともいえる。



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