御曹院ハザマ日記 20:00~21:00
- ひげまみれのらじ
- 2022年1月20日
- 読了時間: 1分
───────何年だったか前
息子の友人であり、私の友人の子供が重い病で入院した。
息子は自分のせいだと泣き喚いた。
その様子を見た私は思った。『この子はなんて心の優しい子だろう』と。
息子は『自分が病気にした』と言うのだ。
病気にしたという理由も、やり方も、全部自分で作り上げて
まるで我がことのように話す息子を、哀れみながらも誇りに思った。
だって次の日にはあの子
自分が泣き喚いていたことなんてすっかり忘れていたから。
更に何年か
私の父が前触れもなく病で倒れた。
御曹院の最新の医療技術を持ってして、助からなかった。
その時、私は思い出した。気づいてしまった。
息子の友人の"あの子"の時と同じだと。
いいえ、ずっと ずっとどこか 本当は、疑っていたのだ。
────けれど、確信した。
父を殺したのは息子だ。
息子に裏切られた。
私は母親であるにも関わらず我が子に対し
怒りと、憎悪と、おぞましさと…
あらゆる嫌悪感が噴き出すのを止められなかった。
そして何より恐ろしかった。
あれは『 化け物 』だ。
息子が次に標的に選ぶのは私ではないと何故言えようか。
息子が、次々に周囲の人間を殺さないと何故言えようか。
けれど今も、息子は何も知らぬという声で
全て忘れたという顔で私を呼ぶのだ。
「母」と
─────────ああ
私にはもう、自由などないのだ。



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